主催イベント

「起業家セミナー ~産学公連携から起業実現へ~」 開催報告

平成30年1月25日(木)に、京都大学大学院工学研究科イノベーションプラザ(京都市西京区)において「起業家セミナー ~産学公連携から起業実現へ~」を開催しました。

今回のセミナーでは、起業を志す方と起業後間もない方を対象に、中小企業支援機関が提供する起業支援活動の紹介や、実際に産学公連携により起業された3社による、起業への想いから現在に至るまでの苦労や工夫などをご講演いただきました。

基調講演

基調講演では、京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門(IMS)研究員の中原有紀子様より、「産学公連携から起業実現へ」と題してご講演いただきました。IMSでは学生のキャリアの選択肢の幅を広げ、日本の将来を担う有望な起業家をより多く輩出するため、先進的かつ体系的な起業家教育を提供しています。ここではIMSの立ち上げから現在に至るまでの経緯をご紹介いただきながら、10年目を迎えた現在、実施している学生向けプログラムから起業支援の具体例まで、中原様の想いを交えながら述べていただきました。

まずはIMSの前身となる「京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(KU-VBL)」についてご説明がありました。KU-VBLは松重和美名誉教授を施設長として1995年に設立。「次々世代産業の礎を築く」をテーマに掲げ、分子ナノエレクトロニクスデバイスや原子レベル制御による新半導体の創製などの研究プロジェクトを展開。京都大学内入居ベンチャー第1号の株式会社ロボ・ガレージほか、EVスポーツカーのGLM株式会社(グリーンロードモータース株式会社)、環境負荷の小さい農業を実践する農業者を増やすことを目指す株式会社坂ノ途中が産声をあげたことなどが紹介されました。

2012年に幕を閉じたKU-VBLと入れ替わるように、2007年に新設されたのがIMS。牧野圭祐本部長(名誉教授)のもと、ベンチャー活動の一環として起業家人財育成とベンチャー支援ノウハウの開発を行う組織であり、京都大学の研究活動を社会に役立たせるために必要な「ヒト・モノ・カネ」を提供しているとご紹介いただきました。

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2014年からスタートしている「技術イノベーション事業化コース」は、一般の方や学部生のアイデアと京都大学の技術をマッチングして起業に関するプロトタイプを作成するプログラムで、すでに19社が起業を実現。実験や研究の場として3Dプリンタなど工作機械を設置した「ファブリケーション・ラボ」を整備し、オフィススペースとして「京都大学ベンチャーインキュベーションセンター」を提供されているとのことです。

また、本日の起業家セミナーのテーマに最も適したモデルとして紹介されたのは、株式会社UTSUWAの飯尾様でした。「音楽のビートだけをデータとして転送する」という京都大学の技術を応用し、カホン(打楽器)に取り付けることで自動演奏する装置を開発。海外の展示会で手応えを感じて起業し、京都大学の起業家育成プログラムGTEPやGAPファンド、キュービックという施設、さらには中小機構や京都産業21の支援も利用しています。飯尾様自身は文系出身で機械が得意ではなかったものの、学部生が「この装置のプロトタイプをつくりたい」という動機でサポートし、現在CTO(チーフ・テクノロジ・オフィサ:最高技術責任者)のような立場で関わっているとのこと。中原様は、飯尾様の事例について「自分には技術がない。でも社長になりたい。そんな夢を大学にある技術を利用しつつ、公共や民間のサポートを受けて実現した、まさに産学公連携から起業を実現した典型です」とし、「起業に関心がないと思っている学生に、『自分の選択肢に起業もあるのではないか』ということに、自然と気付ける場所を作れたらいいなと考えて活動しています」と述べられました。

最後に、中原様はご自身の役割について、「指導しているというよりは、学生がやりたいことをサポートしている」とし、「学生は大学の宝です」と力強く述べられました。

講演1

講演のトップバッターを務めたのは、株式会社FLOSFIA(フロスフィア)代表取締役社長の人羅俊実様。「新規半導体材料Ga₂O₃(酸化ガリウム)を用いて電動システムや電源の小型化にチャレンジ」というテーマでご講演いただきました。京都大学発の新材料である「酸化ガリウム」という新しい半導体材料を用いたパワーデバイスの開発・製造・販売などに取り組み、2018年1月に8億円もの資金調達とデンソーとの事業提携を実現。電気自動車の新ユニットであるPCUの技術革新をめざし、2025年の搭載を目標に取り組んでいくことを発表されたばかりです。

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同社事業の根幹となる酸化ガリウムは、京都大学の藤田静雄教授のグループが最初に発見した新材料で、同大学において世界で初めて単結晶を作ることに成功しています。株式会社FLOSFIAでは、この酸化ガリウムを事業化し、実装デバイスとして世の中に売り出せるレベルのものが本格的に出てきたとのことです。

もう一つの事業である「成膜ソリューション事業」についても、酸化ガリウムを作り出す方法から編み出した重大な発明で、京都大学の研究から端を発していること、大手企業から研究費を受給しながら共同研究を進めていることを紹介しつつ、事業内容や今後の展開についても詳しく述べられました。今後の抱負について、「高品質なものを非真空で安価に量産できるポテンシャルを持つ技術として、電池材料からIoTデバイス、フィルターなど様々な分野に展開したいと」述べられました。

最後に、同社の事業がこうして軌道に乗っているのは、前職で参画していた京都環境ナノクラスター様からのアドバイス、東京大学エッジキャピタル(UTEC)様からの投資、NEDO様によるプロジェクトの採択、複数の大手企業との提携といった様々な支えのおかげと紹介され、感謝の念を述べられました。

講演2

次に登壇されたのは、株式会社ナールスコーポレーション代表取締役の松本和男様。「大学の基礎研究から誕生した画期的なエイジングケア化粧品ビジネスと将来展望」というテーマでご講演いただきました。京都大学と大阪市立大学の基礎研究をビジネス化したベンチャーである同社。日本の少子高齢化による国民医療費の増加や持病リスクが増加するなか、「予防医療で貢献したい」という想いから皮膚に着目した研究に取り組んでいる最中に作成した化学合成品、「ナールスゲン」を用いたエイジングケア化粧品を販売しています。

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化粧品の売り上げは好調で、現在全国11百貨店で販売していますが、常に順風満帆だったわけではなかったとのこと。ナールスゲンを素材として化粧品メーカーに販売しようとしたところ、あまりに画期的な性質を備えていたために信用されず、自社でナールスゲンを使用した化粧品を製作することになったことやパートナー企業の販売戦略の変更による販売延期などがあったそうです。
一方で、「多くの方々に支援をいただいた」と述べられ、日本科学技術振興機構(JST)から支援を受けての設立であったことを紹介。業績がピンチに陥った際には、京都市ベンチャー企業目利き委員会のAランクに採択されたことをきっかけに、地元の京都信用金庫から融資を受けられたことや、テレビや新聞に採りあげられて売上が伸びたこと、トーア紡コーポレーションから研究資金の支援を受けたことを述べられました。とくに「京都産業21には起業時から継続的に補助金によるサポートを受けており、心から感謝している」と述べられました。

今後は、特殊スキンケア化粧品、口腔ケア医薬(部外)品へのチャレンジを計画中で、ここでも京都産業21の補助金を活用しているとのこと。最後に、「ベンチャー企業に大事なのは『誠実』と『忍耐』であり、この2つを続ければ必ず成功できる」と参加者の皆様に温かいメッセージをいただきました。

講演3

この日を締めくくる登壇者は、株式会社オーガニックnico代表取締役社長の中村新様。「農業を科学する~生産・農学・システム技術の融合で有機農業にイノベーションを~」と題してご講演いただきました。
現在は、有機野菜事業とアグリサイエンス事業を二本の柱とする同社。特長を「生産現場の課題やニーズを農学技術で深掘りし、素早くシステムに反映すること」と述べられました。続いて同社のビジョンや戦略目標、それらを支える生育シミュレーションや土壌肥料ゲノミクスなどのコア技術、ハウス内環境制御装置などの現行商品、「技術をお金に換える」商品戦略を紹介されました。

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およそ20年前から「有機農業のメーカーをやろう」と考えていた中村様。オムロン株式会社を退職後に有機農業を学び、株式会社オーガニックnicoを設立されました。当初は「生産と流通販売の二足のわらじが災いして赤字続き」とのことでしたが、流通部分の縮小、栽培品目の絞り込みなどによって黒字化に成功すると、保湿性と通気性の良いハウスと環境制御システムを開発。2015年には販売を開始し、翌年にはシステム事業に特化することに。やがて世界初の新技術「生体センシング」に取り組み、それまでの「有機野菜事業」に加え、「アグリサイエンス事業」を立ち上げたとのことです。
今後のビジョンに「有機農業の品質と生産性を高める世界オンリーワンの技術を構築し、グローバルに普及する」など、戦略目標として「2020年度に日本の農業シーンに影響を与える、研究開発型農業会社として認知されている」などを掲げています。

起業から現在に至るまで、京都産業21の助成金やオムロン株式会社の出資、京都信用金庫の融資等の支援を受けたことも紹介。支援をくださった皆様に深い感謝の念を述べられました。また、ご自身の体験からわかってきたベンチャー経営のポイントとして、「外部協力者がポイント」、「集中と選択をやり切る」などを紹介し、「波に乗っても調子に乗るな」といった自戒を込めた格言も披露していただきました。

事業説明

講演後に、主催者および共催者より、起業や産学公連携で研究を行う際の支援制度について説明させていただきました。独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿本部の江村様からは、同機構における産学公連携の支援活動について、なかでもインキュベーション事業として、産学公連携で研究開発企業を応援する公的賃貸事業場について詳細をご紹介いただきました。

また、公益財団法人京都産業21の秋山より、京都産業21の起業に対する支援活動について説明させていただきました。特に、京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクトについて詳しく紹介させていただきました(詳細はこちら)。

最後に、共催者を代表して公益財団法人京都高度技術研究所の北村専務理事より、参加者様へ並びにスピーカー様へのお礼の言葉を述べ、さらなる飛躍へのエールを贈りました。

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