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「起業家セミナー あなたのやりたい事で創業しよう! ~ワタシの会社づくり物語~ 」 開催報告

平成30年11月8日(木)に、京都リサーチパーク(京都市下京区)において「起業家セミナー あなたのやりたい事で創業しよう! ~ワタシの会社づくり物語~ 」を日本政策金融公庫・京都府よろず支援拠点の協力により開催いたしました(主催:京都府、公益財団法人京都産業21、京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト推進協議会)。

今回のセミナーの参加対象は、創業をお考えの方や創業間もない方、支援団体の方。講師には、会社員生活を経ての創業を既に経験されている3名の方をお招きし、株式会社カンブライトの代表取締役 井上和馬様、株式会社薫風舎の代表取締役 齋藤裕子様、アボワールインターナショナル株式会社の代表取締役 中村真由美様のそれぞれに、現在の事業とそこに至るまでの道のりや思い、創業・事業経営から得られたご経験・知見等についてご講演をいただきました。

以下、当日の概要をご報告させていただきます。

1.井上和馬様によるご講演

株式会社カンブライト 代表取締役の井上和馬様によるご講演。ご講演の前半では創業のきっかけや理念・ミッション・事業内容について、後半では現在の事業に至るまでの経緯や変化、そしてそれらのご経験から得た考え方についてご紹介いただきました。

まずは、創業のきっかけについて。井上様は22歳からIT・ソフトウェア業界で「組織の中で自分の市場価値を上げていく」という方向で努力を重ねてこられた中で、「36歳の時に新オフィスの立ち上げで1ヶ月間カンボジアに滞在し、唯一耳に入ってきた日本語は衛星放送で視聴したNHK大河ドラマ『花燃ゆ』でした。その中で吉田松陰が繰り返し問いかけていた“君の志はなんですか?”という言葉に心を突き動かされ、『自分の残りの人生をかけて、日本の将来世代のために何かできないか』と考え始めました。さらにその半年後に運命的な出会いがあり、『カンブリア宮殿』(テレビ東京の番組)に愛媛県の株式会社エイトワンの大藪崇社長が出演されており、同社のホームページを見ると社会起業家を募集されていたので、放送の1ヶ月後に実際にお会いしに行き、すぐに会社を辞めて缶詰の会社を立ち上げることになりました」と、行動力あふれるエピソードをご紹介いただきました。

次に、缶詰を扱う理由について「半年間考え続けて、“君の志はなんですか?”の答えが出た」と紹介。井上様はもともと、ご家庭で料理をしたり、3人のお子様と食卓を囲む家族の団欒のひとときを大切にされていたこともあり、日本の農業・食糧の生産者の高齢化問題(65歳以上が65%)に注目。20年後に生産の担い手が足りなくなり、新規就農者も苦戦しているという問題に対する解決方法として、「日本の各地域に小規模で多様性のある加工場があり、規格外のものや獲れすぎたものを加工・商品化して国内外へ販売できれば、生産者や新規就業者を支援することにもつながるし、肉・魚・野菜・果物などが扱えて賞味期限が3年もある缶詰の可能性は無限大。海外輸出にも最適で、リサイクル可能な缶はプラスチックゴミの問題解決の一助にもなる」と缶詰を扱うことに決めた理由をご紹介いただきました。

同社の現在の事業内容は、缶詰プロデュース。「日本中の豊かな食を、世界中の将来世代に」という理念と「日本の食の価値を再定義する」というミッションを掲げて、缶詰商品の企画・開発・製造・PR・販売までをトータルでサポートする事業を展開。15年間のソフトウェア開発の経験を活かして、従来の缶詰商品とは異なるアジャイル開発的な商品開発(致命傷にならないように早く小さく失敗と改良を繰り返して「勝てる確率が高い商品」を生み出すことを目指す)に取り組み、原料メーカーと提携して小ロットで高付加価値な缶詰のプロデュース(例:プレミアム缶詰)を行っており、将来的にはシリーズブランド化や海外輸出展開、製造ネットワークのプラットフォーム化などの構想がある旨をご説明いただきました。

話題は、現在に至るまでの過程へ。井上様は「会社設立当初は『自然派缶詰カンナチュール』というブランドを作り、素材にこだわった無添加缶詰を商品開発して、どんどん販売していく…という事業計画でした。しかし、ノウハウがまるでなかったこともあり、試作と製造との違いを認識できずに商品開発に失敗したり、店舗運営やスタッフ採用も後手に回っていたりして、売上は少ししか上がらず、3ヶ月ほどでキャッシュも不足し、最初に自分のやりたかった商品開発を全然できていない状況でした」と事業転換を決断するに至る苦悩のご経験を説明。「一度この状況をリセットするために、“自社商品を作らない”、“物販は頑張らない”などの『やらないこと』を決めて、非常に辛かったのですがスタッフの方に事情を説明して辞めていただいたり、店舗をいつでも臨時休業できるように『製造中CLOSE』の看板を作ったりしました。そして、“ラボを稼働して商品開発をしたい”、“商品開発のノウハウを蓄積するために試作をたくさんしたい”などの『やりたいこと』を考えた上で、“ラボがあるので試作はできる”、“受託開発はソフトウェア業界の経験が活かせる”などの『できること』を考えて行動していくうちに、変化が起こってきました」と事業転換の際の方針をご紹介いただきました。

すると、事業は徐々に好転。「商品開発に特化すれば敵が少なく、原材料提供者、メーカー、問屋、小売の全員と手を組むことができました。また、開発依頼も増えてきて、一人では回せなくなってきました」と井上様。「スタッフを採用しても教育をしている時間も余裕もないので、どうするか…と思ったときに、ビジョンが役に立ちました。ビジョンを狭く・明確に・遠くに設定することで、モチベーションが高く、言わなくても動いてくれる優秀なメンバーが入ってくれました」と人材採用の肝所をご説明いただきました。また、「開発依頼が増えるに従ってレシピやスケジュール、原価などのさまざまな管理が必要な状況に直面し、それをシステムで解決する道を模索したときに、『15年間のソフトウェア開発経験を活かす時が来た!』と、この事業を自分がやる意味がはっきりしました」と、現在構築を模索している地方創生・共創モデル「SMALL MAKERプラットフォーム構想」に至る過程をご紹介いただきました。

講演の最後には「これまでにやってきて良いと思ったこと」として、「目的(理念)を変えなければ、手段は必要に応じてどんどん変えていったほうが良い」、「共感できる理念があれば応援してもらえる時代。理念に共感して集まったメンバーは足し算ではなく掛け算になるので、理念やストーリーは常に発信し続けるほうが良い」、「自分の強みは行動力。やろうと思ったら、やる。ダメだと思ったらすぐ変えるが、やったことは無駄にせず、必ず次につなげていく」と紹介。「異業種であればあるほど、強みや経験値を最大限に活用してください」と、今後創業される方や創業間もない方へエールを送り講演を締めくくられました。

2.齋藤裕子様によるご講演

「未経験で起業しました」と題してスタートした、株式会社薫風舎(くんぷうしゃ)代表取締役の齋藤裕子様によるご講演。現状の事業紹介や、事業スタートのきっかけ、課題やその解決方法のご経験等についてご紹介いただきました。

まずは現在の事業内容について。同社の事業は「ドッグ(犬)ビジネス」で、ドッグサロン事業とドッグホテル事業の2事業を中心に運営。ドッグサロン事業では、移動式の専用車両でお客様のご自宅にお伺いして、お客様の犬(※齋藤様は「わんちゃん」と呼ばれていました)のシャンプーや爪切り、全身カットなどのサービスを京都市で初提供(他地域では提供例あり)。ドッグホテル事業では、店舗で数時間あるいは宿泊込みでお客様の犬を24時間ヒト常駐の自宅兼店舗でお預かりし、給餌や散歩を含めてサービスを提供されています。2016年9月に事業を開始し、2018年10月に黒字化を達成されているそうです。

次に、「なぜ、この事業なのか?」。齋藤様は経済誌の記者として社会人生活をスタートし、出版、金融、流通などの各業界で取材、交渉、マーケティング、営業企画、新規事業をご担当。

27年間の会社員生活を終えるきっかけは、前職での早期退職制度のお知らせ。お盆休みで広島の実家に帰省中にそのニュースを知り、「退職しなくてはならない」と勘違いしてしまった齋藤様は、その後一週間の休暇中に悩みに悩むことに。犬の飼い主としての経験のある齋藤様は、「既存のドッグサロンやドッグホテルは、シニアの犬に対応してくれなかったり、無人になる時間があったりして、他の飼い主の方が必要としているサービスがきちんと提供されていない」という思いに至り、休暇明けに出社した齋藤様の頭の中はドッグビジネスでいっぱいになっていたそうです。

ドッグビジネスを選んだ背景にあるのは、仕事・事業に対する齋藤様の考え方。「仕事の選び方として、『やりたいこと』と『やりたくないこと』、『できること』と『できないこと』の2つの軸で選ぶという考え方もありますが、私の場合には、『必要性があること』と『必要性がないこと』という軸で考えて、『できないこと』だけど『必要性があること』という仕事を選びました。必要性があれば、できないことであってもなんとかなる、と思ったからです」と齋藤様。さらに、ペット市場の将来性について「飼育頭数自体は変わっていないが、市場は急成長しています。ペットの高齢化、家族化の傾向が高まり、子育てが終わったご家庭でも、ペットにはお金をかけても良い状況が続きます」と述べ、需要の高まりも事業内容決定の要因である旨をご紹介いただきました。

話題は、「創業・事業経営にまつわる課題と、それをどう乗り越えてきたのか」について。齋藤様は「ないものだらけ」とご自身の状況を説明し、設備、お客様、人手、販促費用・資金、ノウハウなどのない中で「ないからといってあきらめるのか?」とご自身に問いかけて「負けるものか」という意欲でスタート。特に、技術・ノウハウと資金との双方の不足をどのように乗り越えてきたのかについてお話をいただきました。

技術・ノウハウの不足については、ペットビジネスの開業者の多くが100万円以上の学費をかけて専門学校に通い、5年以上の実務経験を積むという状況の中で、齋藤様は「私にはその時間的・資金的余裕がなかったため、最短・最低コストで技能を修得する方法を探しました。開業にあたり最低限必要な愛玩動物飼養管理士を通信教育で取得するとともに、最低限必要な実技については技能講習を半年間受けに行って、なんとか自分一人で一通りのサービスを提供できるところまでこぎつけました」と紹介。

さらに、「技術がないところに、お客様が来てくれるわけがない。未経験だからこそ差別化する必要があり、『他の方がやっていないこと』で、『必要性があること』を考えざるを得ませんでした」と考えて、移動式ドッグサロン事業やドッグホテル事業が誕生。「『ペットを預ける」というよりは、『齋藤さん家に(ペットが)遊びに行っている』という感覚で預けてくださっています」とお客様の声をご紹介いただきました。また、定期的に利用するドッグサロンと、必要なときに利用するドッグホテルとの両事業では、お客様のニーズがクロスする(交わる)こともままあり、客単価が上がりやすいという特徴があることもご紹介いただきました(ドッグホテル事業は店舗のリニューアルを機にお客様の数も増えて、現在、移動式ドッグサロンは定休日の水曜日にのみ提供されているそうです)。

資金の不足については、補助金や助成金などの支援制度や融資を最大限活用。齋藤様は「そんなこと(補助金や助成金を使うこと)をするくらいなら本業に集中したほうが良い、という意見の方もおられますが、創業時に30万円~50万円の最終利益を出そうとしたらどのくらい大変かと思ったら、最大限やれるだけのことをやらないといけないと思いました。また、そうした過程で、自分の考えていることを言葉にまとめて、人に説明する良いきっかけになりました」と説明。「資金面以外でも公的機関や周囲の方には大変お力をいただき、京都商工会議所様や京都府男女共同参画課様、京都産業21様、毎日放送様や京都新聞様、読売新聞様、近隣の方々、家族・知人・友人の皆様、そしてお客様から、本当にたくさんご支援をいただきました。私には資金は限られていましたが、お助けくださる方が多かったことがとてもありがたいことでした」と感謝の気持ちを述べられました。

講演のまとめには、皆様にお伝えしたいこととして「50歳を過ぎていても、未経験で技術がなくても、必要性がある事業であれば、ノウハウや資金がなくても諦めなくてもいい。支援機関や制度はたくさんありますし、金融機関を含めてたくさんの方々のお力添えをいただくことができますし、横のネットワークも広げていけます。まずは気持ちをオープンにして、たくさんの方との出会いの中に自分の身を置いて、自分の事業プランをたくさんの方に聞いていただくというところから始めて、挫けない意思と周りへの感謝があれば、必ず道は拓けてくると思います」と参加者の皆様へエールを送り講演を締めくくられました。

3.中村真由美様によるご講演

「乳がんを経験しても、私はおしゃれを諦めない。 ~乳がん経験者が作る乳がんブラジャー~」と題してスタートした、アボワールインターナショナル株式会社 代表取締役の中村真由美様によるご講演。起業に至るまでと起業後のご経験、今後の方向性についてご紹介をいただきました。

まずは、起業のきっかけについて。中村様は29年間、上場企業で会社員として出産・育児を経験しながら働くパイオニア女性として勤務。当時、女性の産休・育休制度の整っていない環境にあって、「男性上司・社員に『女は子供を生んだらあかんなあ』と文句を言わせないように、自分の後に続く女性社員の道を作るつもりで、“絶対に負けたらん(負けないぞ)”という気持ちで働きました」と、ご自身の働き方をご紹介いただきました。

責任や難易度の高い激務が続く中、中村様は2011年3月に乳がんの両乳房温存手術を受けることに。手術後、ブラジャー選びの選択肢が非常に限られている状況に直面し、「もっとオシャレで、傷跡にも優しく、従来よりも安価に購入できるような、“気持ちのあがる”ブラジャーが必要だ」という思いに至り、乳がん患者による、乳がん患者のためのブラジャーを作り届ける事業を起こすべく、平成27年5月に会社を退職。10月にオフィスを開設するに至ったそうです。

次に、「図らずも背中を押される」と題して起業後の歩みを紹介。友人や支援者の方に背中を押されたことがきっかけで、平成28年1月の経済産業省近畿経済産業局LED関西ファイナリスト10人への選出、平成28年3月の第4回京都府女性起業家アントレプレナー賞、平成28年7月の京都府女性アントレプレナー販路拡大事業採択。受賞者や採択者への各種支援を活用しながら、平成29年2月に法人化、3月に新商品を発売。平成29年10月の第1回東京都女性起業家支援APT Women受賞につながり、3ヶ月間の短期集中型育成プログラムの第1期生として支援を受けながら事業を育ててこられたそうです。

また、「私のベースは、乳がん患者」として、市民公開講座での登壇やピンクリボン、乳がんサロンなどの支援活動を紹介。「乳がんに罹患しても起業できる、乳がんを経験してもオシャレを諦めない、ということをお伝えしたり、乳がん患者の皆さんが、治療の中で“頑張ってもいいかな”と思えるように、共に闘う仲間が集って楽しくお付き合いできるような場所作りを大切にしていきたい」と、ご自身も周囲の皆様も力を合わせて今も病と闘っており、その立場であるからこそ行き届いた商品開発ができる、ということが伝わってくるようなエピソードをご紹介いただきました。

そして、「年間で約9万名の乳がん患者の方が、症状や転移を心配しながら日々を送っています。現在、国内の病院の300箇所に弊社のブラジャーのパンフレットやサンプルを設置いただいていますが、医師の方や看護師の方が『乳がんと闘っている患者さんが、こんなに素敵なブラジャーをつけたらきっと元気が出る』と申し出てくださったためです。乳がん手術は、東北や鹿児島などで手術の数が多く、リクエストがあればできるだけ各地域に行くようにしています。全国の乳がん患者の方にお届けするために、販売店についても増やしていきたいです」と、市場や業界での動向も踏まえながら、中村様の事業にかける思いをご紹介いただきました。

今後の目標として、中村様は「乳がんブラの選択肢を増やすこと」、「乳がん患者がブラをもっと簡単に買えるようにすること」、「乳がん患者の体と気持ちに添った商品を開発すること」の3つを挙げられ、「女性を交えた専門医の方や、乳がん看護認定看護師の方、乳がん患者の方を交えて新商品を開発するとともに、今後は学会への出展・発表なども視野に入れています」と展望を紹介。人材・出店・資金調達・販売などの課題についても触れられましたが、中村様と周囲の皆様ならば、それらの課題に対しても乗り越えていき、全国あるいは全世界の乳がん患者の方々へ「このブラジャーがあってよかった」と思っていただけるような事業をきっと実現する、と確信させてくれるような力強いご講演でした。

講演終了後には、3名の講師の皆様との質疑応答および名刺交換が行われ、活発な交流・意見交換の場となりました。講師の皆さま、参加者の皆さま、本当にありがとうございました。

* おわりに

京都中小企業事業継続・創生支援センターでは、中小企業の皆様を支援するために、今後もイベントの開催や支援体制の整備・強化を行って参ります。最新情報は『京都起業~承継ナビ』をご覧ください。

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