事業承継支援

「事業承継フォーラム 2015”京都流”後継者マッチング「弟子入り」方式の秘訣」開催報告

平成27年8月21日(金)、京都リサーチパークにおいて「事業承継フォーラム 2015”京都流”後継者マッチング「弟子入り」方式の秘訣」を開催いたしました。

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多くの中小企業が後継者不在問題に直面する中、京都中小企業事業継続・創生支援センターでは、これまでに1,000件近い相談対応に加え、後継者マッチングという全国にも珍しい取り組みを行ってきました。ご相談をお伺いする中で、第三者承継に対する抵抗感が事業承継の選択肢を狭める原因になっており、京都に多い創業者経営・老舗企業であればあるほどその傾向が顕著なように思われます。

今回のフォーラムでは、後継者不在問題でお悩みの経営者の方および中小企業の支援機関の皆様、約56名の方にご参加いただき、京都の風土と事業の継続についての基調講演と第三者承継に取り組んでいる事業者のパネルディスカッションを開催し、「伝統×革新」のまち・京都ならではの「事業承継」の可能性について考えました。

以下、当日のプログラムに沿って、フォーラムの概要をご紹介いたします。

1.開会挨拶

まずは、京都産業21の専務理事 山崎幸司より、近年の日本の中小企業の廃業件数が倒産件数の2倍以上も多い状況であることを紹介し、そのような中で京都中小企業事業継続・創生支援センターが設立された旨を紹介いたしました。

2.基調講演「京都の風土と事業の継続」

続いて、一般社団法人事業継続支援財団 理事長の中野淑夫様より、「京都の風土と事業の継続」というテーマでご講演をいただきました。

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ご講演では、まずは「京都学」や「京都起業論」という地域名が入った科目が大学で設置されるのは京都だけであるという点に着目し、京都の経済規模や風土の特徴について、東京や大阪と比較しながらご説明いただきました。風土の特徴としては、京都には、歴史的に階層別社会が残っていること、歴史的な文化が多く残っていること、職人が多くいること、居住一体型でコンパクトな町であること、学生が多い事、個人の家の歴史が古いこと、企業・大学・府民のつながりが深いこと、府民の目利き力が高いことの8点を挙げられていました。

次に、このような風土で生きてきた京都のコミュニティの特徴について、相互啓発・切磋琢磨ができるというメリットがあるというお話をいただきました。

京都の企業の特徴については、借金を嫌い、儲けるよりは損をしたくないと考える経営者が多い一方で、廃業率が高いという特徴があり、その原因として、同族会社が多く、第三者への事業承継に抵抗感があることをご紹介いただきました。

このような特徴を持つ京都の経営者の方に向けて、経営はシステムであり資産とは分離することが可能であること、京都府外の出身の方でも十分に事業を継続させる資質を持っていること、京都で企業が続くことには文化的な意義があり、企業が続いていくことにこそ意味があることを経営者の方にもっとご理解いただきたいとのメッセージをいただきました。

また、後継者不在問題に取り組む支援機関に向けて、経営者の悩み等をもっとオープンに話していける場を提供するなど、今後の経営者への支援に期待しているとのご助言をいただきました。

3.パネルディスカッション「後継者候補の発掘・育成・見極め」

さらに、パネルディスカッションでは、後継者候補として経営者のそばで働きながら段階的な事業承継を目指す『弟子入り方式』に取り組む3名の事業者の皆様をお迎えし、後継者の発掘・育成・見極めについて事業者の皆様の考えをご紹介いただきました。

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まずはオフィス運営をされている株式会社職生活研究所:顧問・ファウンダーの平井嘉人様に200年の歴史ある地域にある企業に任される役割や、代表者ご自身が若いうちから後継者を探すメリットについてお伺いし、祇園祭は京都の特別な行事であり、地域の方に受け入れられる役割が求められていること、後継者の見極めには10年ほど時間がかかるという認識があるというお話をいただきました。

次に、和雑貨製造を営む有限会社クリエイティブ向陽 代表取締役の安田悟様に後継者候補発掘の際の工夫や見極め、現在の状況についてお伺いし、求人の際の文言の工夫について、実際の求人票をご紹介いただきながらご説明いただきました。

さらに、京の宿「梨の木」女将の山森都代子様に外国人を魅了するおもてなしの特徴や家業の承継と相続について現在のお考えをお伺いしました。山森さん自身は自分ができることを懸命に取り組んでいたところ、リピーターの方が増えたというお話や家業については、お子様たちと現在の旅館の状況と京都の観光の情勢についてまずは情報共有を行った上で進めていくことが大事であるというお話をいただきました。

お三方とも、コーディネータに相談したことで、自分では気が付かなかったご自身の企業の魅力に気が付かされたというお話もいただきました。

4. 総括・閉会挨拶

最後に、京都中小企業事業継続・創生支援センター長の沢尾俊和より、当支援センターの設立経緯、これまでは先進県を参考に手探りで啓発やマッチング事業を進めてきたが、現在は京都の特質を踏まえ、70を超える機関の連携・協力を得ながら、後継者マッチングから資産問題解決、後継者育成、人材確保など長い期間に渡り伴走支援する取組を進めていることなどを紹介いたしました。

また、今後のセンターによる支援事業の方向性として、各種機関との連携強化を一層進めるための支援ネットワークの再構築、本日のフォーラムの中で提案のあった後継問題に悩む企業間の交流・情報交換の場の設置や財務諸表に現れない企業価値の評価など、事業承継を支援する取組を積極的に進めていくことを説明いたしました。

*おわりに

京都中小企業事業継続・創生支援センターは、平成25年6月の開設から3年目を向かえました。事業承継問題解決に向けて、今年度もイベントの開催や支援体制の整備・強化を行っていきます。最新情報は『京都起業・承継ナビ』をご覧ください。