事業承継支援

平成28年7月14日(木)に、メルパルク京都において「平成28年度 第1回京都府プロフェッショナル人材戦略拠点セミナー 事業を続ける為に考えておくべき事」を開催いたしました。

京都府プロフェッショナル人材戦略拠点は、京都府内の中小企業の皆さまに、「攻めの経営」(※1)への意欲を喚起し、プロフェッショナル人材(※2)の活用による成長戦略実現を促す目的で、公益財団法人京都産業21内に平成27年12月1日に設置されました。

今回のセミナーでは、事業承継に関心があり、「攻めの経営」を目指している経営者の方を主な対象とし、約40名の方にご参加をいただきました。京都府行政書士会と日本政策金融公庫の専門家の方を講師として招き、ご講演をいただきました。

※1「攻めの経営」…新商品の開発や新たな販路開拓などに挑み、経営革新を遂行する経営
※2「プロフェッショナル人材」…「攻めの経営」を通じて成長戦略を具現化する人材

以下、当日のプログラムに沿って、セミナーの概要をご紹介いたします。

1.開会挨拶

まずは、公益財団法人京都産業21の専務理事:小林章一より、昨今の事業継続の近況を交えながら、京都府プロフェッショナル人材戦略拠点の設立の趣旨や目的について説明いたしました。

2.「京都府プロフェッショナル人材戦略拠点事業の説明」

続いて、京都府プロフェッショナル人材戦略拠点のサブマネージャー:山本泰功より、京都府プロフェッショナル人材戦略拠点の設立の経緯、事業スキーム、現在活用されている企業の特徴、プロフェッショナル人材を活用してマッチングが成功した事例について紹介いたしました。(ご参考:京都府プロフェッショナル人材戦略拠点とは

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3.講演「事業承継でおきやすい問題と事前対策」

続いて、行政書士森戸博事務所の代表:森戸博様、張本貴子行政書士事務所の代表:張本貴子様より、「事業承継でおきやすい問題と事前対策」というテーマでご講演をいただきました。

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森戸 博 様

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張本 貴子 様

まずは森戸様より、行政書士の業務内容について、「行政書士とは、何をしてくれる職業でしょうか?」という依頼者目線の切り口でご紹介いただきました。行政書士は「許認可のプロ」であるとし、行政書士への依頼内容については「官公署に提出する書類」・「権利義務に関する書類」・「事実証明に関する書類」の3つの書類の作成・提出代理・相談であるとまとめていただきました。書類の具体例については、建設業許可申請や飲食店営業許可申請、遺産分割協議書などの具体例を挙げ、なぜそれらの書類の作成が必要なのかについて、会社取り巻く法規制環境とあわせてご紹介いただきました。

その上で、今回のセミナーのテーマである「事業承継」にスポットを当てていただきました。事業承継の流れを「計画段階」と「実行段階」とに分けて、いずれの段階においても行政書士への依頼が必要であるとご紹介いただきました。なぜ行政書士への依頼が必要なのかということについて、事業承継を「物的承継」(自社株や運転設備資金など)と「人的承継」(経営ノウハウや社内外との関係、許認可など)とに分けた上で、「人的承継」において行政書士が必要である旨をお話いただきました。具体的には、「知恵の経営」報告書類や各種補助金の申請書類の作成に際して行政書士と連携することで、スムーズな事業承継を行うことができる、とお話いただきました。

次に張本様より、事業承継で起きやすい問題と事前対策についてのご説明をいただきました。張本様は、京都府舞鶴市の税理士・司法書士・行政書士などの様々な士業の方が参加する『相続サポートネットワーク舞鶴』の一員として活動されており、このネットワークを通じて、各士業のプロフェッショナルの方と連携しながら、様々な問題の解決をされています。

そのご活動の中で、事業承継と相続とがリンクしていることに気がついていない個人事業主や経営者の方がいる、ということに気付かれたそうです。例えば、事業主の家族構成が、「本人、妻、3人の子供」という家族構成で、「妻に株式の60%、長男に40%を相続させる」という旨の遺言書を作成した場合に、どのような問題が発生するのかについてご説明いただきました。遺言書の内容によっては、遺留分の問題や議決権の問題により、事業承継と相続とが事業主の意図通りに行えないことがあり、こうした問題を解決するためには、税理士やファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、不動産鑑定士、行政書士等といった様々なプロフェッショナルの方の支援を受けることで回避することができるそうです。

4.講演「事業承継と許認可手続き ~行政書士の活用事例~」

続いて、京都府行政書士会の門田猛様から、行政書士の活用事例として、まずは事業承継の許認可手続きについてご説明いただきました。事業承継の許認可手続きの一連の流れについて、関係する法律、必要書類、書式テンプレートとともにご紹介いただきました。

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次に、行政書士の具体的な活用事例をご説明いただきました。例えば、吸収合併の事例では、食品製造業や運送業を営む関連企業が吸収合併をすることに伴いどのような許認可手続きが必要かを調査して欲しいという、司法書士の方からの依頼事例についてご紹介いただきました。また、新設分割の事例では、公共工事を受注する建設業者が、現在の格付を維持するために会社分割をする場合に、会社分割および建設業許可にかかる手続きを依頼したいという、税理士の方からの依頼事例についてもご紹介いただきました。その他にも、吸収分割や株式譲渡、相続、親族外承継、事業譲渡・資産売却の事例や、代表者が突然亡くなってしまった事例などを挙げていただき、中小企業にとって事業承継は身近な問題であるとお話いただきました。

事業承継における行政書士の活用については、事業承継に際して発生するさまざまな問題に対して、ひとつひとつを丁寧に解決していく必要がある旨を強調し、その上で、誰に事業承継を依頼するかによって方向性が変わってきてしまうため、慎重な人選が必要であるとお話いただきました。また、事業承継に関心のある経営者の皆様にとって、経営の「攻め」の面に集中できるようにするためにも、「守り」の面で行政書士を活用する価値があります、とまとめていただきました。

5.日本政策金融公庫のご紹介~事業承継支援・UIJターン支援ほか~

本セミナーの最後に、日本政策金融公庫 京都創業支援センターの所長:金子孝幸様から、事業承継やUIJターン(Uターン、Iターン、Jターンの略)に役立つ資金調達制度についてのご紹介をいただきました。事業承継・UIJターンをご検討されている方にとって、実用的な補助制度などの有益な情報をいただきました。

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*おわりに

今回のセミナーでは、事業承継に関心があり、「攻めの経営」を目指している経営者の方を主な対象に、事業承継と相続とが密接に関わっており、どのような問題が発生し、どのような対策を考えることができるのかなどを中心に、さまざまな内容について学ぶことができました。

京都府プロフェッショナル人材戦略拠点では、プロフェッショナル人材採用による中小企業の皆様への支援を強化すべく、今後もイベントの開催や支援体制の整備・強化を行って参ります。最新情報は『京都起業~承継ナビ』をご覧ください。