事業承継支援

平成29年3月23日(木)に、舞鶴グランドホテル(京都府舞鶴市)において「第4回京都府プロフェッショナル人材戦略拠点セミナー ~事業を次世代へつなぐための知恵と準備~」を開催いたしました。

京都府プロフェッショナル人材戦略拠点は、京都府内の中小企業の皆さまに、「攻めの経営」への意欲を喚起し、プロフェッショナル人材の活用による成長戦略実現を促す目的で、公益財団法人京都産業21内に平成27年12月1日に設置されました。

今回のセミナーでは400年以上事業を引き継いでこられた老舗企業「山ばな平八茶屋」の第20代目主人の園部平八様と、数多くの企業の事業継続を財務面から支援されてきた税理士法人の八田泰孝先生を講師にお迎えして、円滑に事業を次世代へつなぐために欠かすことのできない様々な事柄についてお話いただきました。

以下、当日のプログラムに沿って、セミナーの概要をご紹介いたします。

1.基調講演

基調講演では、「山ばな平八茶屋」の第20代目主人の園部平八様より、「事業を引き継ぐための老舗企業の知恵と工夫」というテーマでご講演をいただきました。

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まず、山ばな平八茶屋の400年にわたる歴史と経営の知恵について、お話いただきました。
老舗企業には『創業時から全く変わらないお店』と『創業時から同じ業種だが業態は変えているお店』との二種類がある。山ばな平八茶屋は後者の老舗企業で、天正年間(安土桃山時代)の創業時には街道茶屋だったが、その後、萬屋を経て現在の料亭という業態へ至った。
また、山ばな平八茶屋の「麦飯とろろ汁」は創業当初からの伝承料理として大切に引き継がれてきているが、その一方で他のお料理については、時代とともに工夫・変化を重ねてきている。
こうした「変えるべきところと、変えずに大切にすべきもの」を見極めることが事業を次世代へつなぐための知恵である、と強調されていました。

続いて、事業を次世代へつなぐための準備についてお話をいただき、後継者を駅伝のランナーに例えて、「どんな状況であろうとも、次のランナーにタスキを渡すことが肝要」と力説。ご自身とご子息の事業承継のケースを例に、「技術を継承するだけではなく、老舗企業の心・考え方を一子相伝することが欠かせない」とし、教育の重要性を強調されました。また、「準備は早ければ早いほど良い」とし、園部先生ご自身も、既に孫の代の承継の準備に注力されているそうです。

最後に、「時代に迎合せず、時代に必要とされるようになるべし」、「受け継いだ暖簾は守った時点で廃れるため、常にトップを走り続ける努力が必要」とまとめられました。
参加者の皆さまも、400年以上事業を継続・承継されてきた中での経験・考え方が集約された考え方に触れて、事業を次世代へつないでいくためのヒントを得られている様子でした。

2.講演

続いてのご講演では、「税理士法人エム・エイ・シー京都」の代表であり、公認会計士・税理士の八田泰孝様より、「円滑な事業承継をするための財務準備」というテーマでご講演をいただきました。

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事業承継時の財務準備の説明に入るために、まずは、株式会社や株式の仕組み、後継者が取得しておくべき持株比率について触れた上で、事業承継の財務面の要である「後継者への株式の移動」についてご説明いただきました。
株式の移動方法には、贈与によるものや、譲渡によるもの、相続によるものがあり、贈与税の多寡と持株比率との兼ね合いや、譲渡時に必要な後継者の資金、相続時の遺産分割協議についてなど、それぞれの移動方法についての注意点やポイントをご説明いただきました。特に相続については、現経営者の他界後に相続人に株式が分散してしまった場合には、「株の譲渡の交渉が困難になるケースが考えられる」と説明し、相続時売渡請求権などの定款への記載や、事業承継計画の作成などの対策を紹介するとともに、「生前に後継者が困らないように準備しておくことが重要」と強調されていました。

また、講演用にご用意いただいた架空の決算報告書を用いて、損益計算書や貸借対照表による株式の価値の算出例や、相続税の算出例、遺産分割の考え方、遺留分の算出例、株式の買い取り価格など、事業承継に関連して必要となる一連の事項をご説明いただき、財務面での事業承継準備の概要を一挙に学ばせていただきました。ご講演の最後には「財務面での事業承継は『先手必勝!』」と再度強調いただき、「早め早めの準備が肝要です」とまとめていただきました。

3.事業説明

最後に、京都府プロフェッショナル人材戦略拠点の奥野サブマネージャーより、京都中小企業事業継続・創生支援センターの設立の経緯や事業承継の現状についてご説明させていただきました。また、実際に寄せられる相談事例として「親族承継を決定したが、後継者が高齢なため3代目の後継候補者を探したい」、「廃業予定で事業を縮小してきたが、取引先から事業継続を依頼され、事業継続の方法を模索している」という例をご紹介させていただくとともに、支援対策として、人材マッチングイベントにより採用に至った事例や、専門家派遣制度の活用、関連組織との連携などの支援の事例についてご紹介させていただきました。

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京都府プロフェッショナル人材戦略拠点では、プロフェッショナル人材採用による中小企業の皆様への支援を強化すべく、今後もイベントの開催や支援体制の整備・強化を行って参ります。
最新情報は『京都起業~承継ナビ』をご覧ください。